家賃滞納と時効の関係を教えてください

賃貸マンションを経営しています。入居者に家賃滞納者がおり、時効を主張されています。何年も前から1か月分の家賃が遅れたままとなっていたのですが、今回遅れを解消して欲しいと強く申し入れると、「消滅時効が完成したから大家さんに滞納分を支払う義務はない」と言われましたが本当でしょうか。

時効とは

消滅時効制度

消滅時効制度とは、権利を行使することができるときから一定期間、権利の行使をしない場合に、その権利自体を消滅させてしまう制度です。例えば、他人にお金を貸していても、法律によって定められた時効期間を経過すると、貸金債権が消滅してしまうことになります。滞納家賃についても、もちろん消滅時効の対象となります。

時効の援用

時効によって利益を受ける者が、その利益を享受する意思を表示することを時効の援用といいます。この時効の援用がないと、裁判では時効の効果を前提にすることができないとされています。例えば人からお金を借りている人が、時効期間の満了後であっても、お金を返したいという意思を尊重したものです。

滞納家賃の時効

滞納家賃の時効期間

定期給付債権といって、年またはこれよりも短い期間ごとに支払われる債権の消滅時効期間は民法により5年間とされています。家賃のような賃料債権の場合、月払いもしくは年払いの契約となっていることが多いでしょうから、こうした契約に基づく賃料は5年間で消滅時効にかかります。

滞納家賃の時効の起算点

賃料の時効期間は、各支払期から起算され、そこから5年の経過で消滅時効にかかります。例えば、月払いの契約となっている場合、各月分の家賃が、それぞれの支払期の5年後から各自時効によって消滅していくことになります。ですので、5年分の家賃滞納がある場合にも、その全てがいきなり時効消滅するのではなく、一番古いものから1か月分ずつ時効にかかっていくことになります。

滞納家賃の時効消滅を防ぐには

古いものから充当していく

賃料は古いものから順に時効にかかっていきますので、滞納家賃の一部について弁済があったような場合には、常に古いものから充当し、新しいものを未払いと把握するようにすべきです。例えば、現在が12月中旬だとして、同じ年に、月払い賃料(毎月末日限り翌月分払い)の3月払い分と9月払い分が未入金で、他の月はそれぞれ1か月分の支払があったような場合、4月分と10月分が未払いと考えるのではなく、11月分と12月分が未払いと整理して請求書等を作成すべきということです。

債務承認書

賃借人から未払賃料の存在を確認する書面(債務承認書)を作成してもらうことで、時効を中断する方法があります。この場合、原則として債務承認書の作成時点から、再度5年間の時効期間が進行します。、

裁判

訴訟等の裁判の申立てによって時効の中断の効果が生じます。判決等が確定すると、そこから10年の時効期間が改めて進行することになります。

一方的な催告書だけでは時効は中断しません

賃借人に請求書や催告書を送っていても、時効の中断の効果は確定的に生じません。6か月以内に裁判等をする必要があります。また、この6か月の期間は再度の催告で延長することはできませんので、時効期間の満了が近い場合には、予め弁護士に相談することをお勧めします。

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