共有の法律関係

共有とは何か

共有とは、ひとつの物を複数人が共同で割合的に所有することをいいます。例えば、兄弟であるABCが、共同で土地を購入し、3分の1ずつ割合で土地所有権の持分を取得するような場合がこれにあたります。不動産でなくても共有関係が生ずることはありますが、法的なトラブルにまでなるケースは不動産の共有に関するものが多いでしょう。

共有の法律関係
なお、物の共同所有関係には、講学上、最も個人主義的色彩の強い一般的な「共有」、その対極にあり団体主義的色彩の強い「総有」、「共有」と「総有」の中間である「合有」などの形態があると考えられていますが、以下では主に、これらのうち一般的な「共有」について説明します。

特殊な共有の状態

上にみた一般の共有関係と区別が必要なものとして、「区分所有」と「遺産共有」について説明します。

区分所有

区分所有とは、分譲マンションなどのように、一棟の建物を区分し、その各々を一個の所有権の対象として扱う所有関係をいいます。ひとつの建物についてはひとつの所有権が成立するのが原則であるのに対し、区分所有ではひとつの建物の各部分(専用部分)に個別の(区分)所有権が成立することがポイントです。

例えば、兄弟であるAとBが、区分所有登記のされている投資用のマンション2室(101号室と102号室)を購入する場合、Aが101号室を、Bが102号室をそれぞれ単独で購入すれば、AとBは単独の区分所有者同士の関係となります。他方、AとBが共同で代金を負担して101号室のみを購入する場合には、AとBは101号室の区分所有権の共有者の関係になります。

区分所有の場合、区分所有の対象とならない共用部分(エレベーターなど)については区分所有者の共有となるものとされており、建物の区分所有に関する法律によって、民法とは異なる扱いが定められています。

遺産共有

遺産共有とは、相続によって発生する相続人による遺産についての共有関係をいいます。個別の財産を対象とする通常の共有関係とは異なり、例えば、相続財産のうちに複数の不動産があるような場合には、その全ての不動産を相続人が各自の相続分の割合で共有するという状態となります。

一般の共有関係との違いとしては、遺産共有の解消を裁判手続を通じて行うときには、家庭裁判所における遺産分割審判手続によることが必要であり、通常の共有物分割請求訴訟によることはできません(もっとも、例外的なケースでは結論が逆となることもありますので注意が必要です)。また、通常の共有物分割では協議の成立や判決の効力が遡及することはありませんが、遺産分割の場合には一定の遡及効が認められるという点も異なります。

共有物の使用等

共有は、共有物の全体を複数人で共同所有する形態ですので、共有物の取り扱いに関して共有者の意見が対立する場合があります。以下では、こうした共有物の取り扱いに関する民法の規律を概説します。

共有物の使用

各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます。もちろん、共有物の性質によっては、共有者が同時にこれを使用できない場合もありますので、誰がどのように使用するかという点については、共有物の管理に関する事項の問題として、それぞれの持分の価格に従いその過半数で決するものとされています。

第二百四十九条(共有物の使用)

各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

第二百五十二条 (共有物の管理)

共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

したがって、例えば、ABCが共同して宅地を購入し3分の1ずつの持分がある場合、この宅地をAの自宅の敷地として利用するか、ABC共同名義のアパートを建てる敷地として利用するかは、共有物の管理の問題としてABCの持分の過半数によって決めることになります(但し、宅地の性質や形状を変えてしまうような場合には、共有物の変更として共有者全員の合意が必要となることもあります。)。

もっとも、AがBCの反対にもかかわらず勝手に自宅を建ててしまったとしても、Aは一応共有物の全体を使用する権利があるとされているため、BCはAに建物の取り壊しまでは請求できません(ただし、この場合には、土地の賃料相当額の不当利得ないし損害賠償を請求できます。)。

変更や処分

各共有者は、共有物の性質や形状を変えてしまう行為(これを変更行為といいます)は、その他の共有者の同意を得ずに無断で行うことはできません。変更行為には、共有物を全体を第三者に売却する行為も含まれるとされていますので、不動産の共有者が当該不動産自体を勝手に第三者に売却することはできません。

第二百五十一条 (共有物の変更)

各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

これに関連して、最高裁平成10年3月24日判決は、一部の共有者が畑を無断で宅地造成してしまったという事案で、原状回復が不能であるなどの特段の事情のない限り、ほかの共有者は持分権に基づく原状回復請求をすることができると判断しています。

保存行為

共有物の変更や管理と異なり、共有物の保存行為については、各共有者が単独でこれを行うことができます。保存行為とは、例えば、ABCが共有している土地を不法占拠しているDに対し、その立ち退きを求めるような行為をいいます。このような保存行為は、共有者の共同利益のためのものであるため、単独で行えるとされています。

共有物分割の基礎知識:目次

  1. 共有の法律関係
  2. 共有関係を解消する方法
  3. 共有物分割請求権と手続き
  4. 裁判による共有物分割の方法

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