共有物分割調停を起こされたら

賃貸用の不動産を共有しています。先日、裁判所から、共有物分割調停の呼出状が届きました。他の共有者が、共有物の分割を求める調停を起こしたようです。このような場合、どのように対応すればいいのでしょうか。

共有物分割調停の申し立てがなされるケース

共有物分割調停が申し立てられる場合には、どのようなものがあるでしょうか。まず以下では、共有物分割調停に至る理由としてよくある事情をみていきましょう。

よくあるケース1 遺産分割後に共有となっていた不動産

相続が発生し、遺産分割協議によって不動産を相続人の共有とした後に、一部の共有者が共有関係の解消を求めるという場合が考えられます。例えば、父が亡くなり、遺産分割協議において父名義の貸駐車場を母・長男・次男の共有にしたが、その後、次男がその土地を利用して自宅を建てるため、共有物分割を求めてきたというような場合です。

よくあるケース2 共同出資で購入した収益物件

賃貸マンションや収益ビルなどのまるごと一棟を共同で購入し、複数人で共有としていたが、一部の共有者に事情の変更があり、共有物分割を求められる場合が考えられます。例えば、兄弟で収益ビル建築し共有としていたが、その後、弟が自己の借金の返済資金を作るため、共同売却を前提とした共有物分割を求めてくるというようなケースです。

よくあるケース3 共有者のひとりが持分を譲渡

あなた以外の共有者が、共有不動産の持分を第三者に譲渡し、その第三者から共有物分割請求を求められる場合があります。近年では、共有持分の買い取りを積極的に行う不動産会社が増えており、このような会社が不動産の持分を買い取った上で共有物分割調停を行うような場合もみられます。

共有物分割調停を申し立てられた場合の対応

では、共有物分割調停を申し立てられた場合、あなたはどのような対応をすればよいでしょうか。ここでは、共有物分割調停を含む民事調停を念頭に説明していきます。

1 共有物分割調停の期日への出頭

調停の期日は、通常は平日の昼間に簡易裁判所で行われます。昼間に働いている人であれば、その日に裁判所まで出頭するというのは難しいかもしれません。しかし、共有物分割調停の期日には、できる限り出頭することをおすすめします。

早期解決の可能性も

共有物分割請求訴訟の提起には、調停前置主義がとられていません。このため、調停で解決する見込みが全くないならば、申立人としては、直ちに共有物分割の訴えを提起すればよいはずです。にもかかわらず、共有者の一部が共有物分割調停を申し立ててきたという場合には、その人としても、話し合いで早期に解決する意思(多少譲歩する覚悟)をもっている可能性があるともいえそうです。

納得のいかない調停案は拒否できる

共有物分割調停という手続は、簡単に言えば、裁判所で行われる共有者間の話合いです。したがって、あなたが最終的に合意しない限り、調停委員や相手方の一方的な意思によって最終的な解決案が決められてしまうということはありません。どうしても納得できない解決案しか提示されない場合には、調停を不成立とし、裁判でご自身の言い分を主張することが可能です。

正当な理由のない不出頭には過料の制裁も

共有物分割調停の期日に正当な理由なく出席しない場合、法律上は,5万円以下の過料に処せられる可能性があります(民事調停法34条)。実際にこの規定が使われて過料に処せられた例はあまりないようですが、だからといって絶対に過料に処せられない保証はありません。

2 共有物分割調停期日での対応

共有物分割調停では、裁判官1名と調停委員2名で構成する調停委員会が、共有物分割に関する当事者の希望や意見を確認した上で、当事者の合意可能な和解案を調整していくことになります。このため、共有物分割の調停期日に臨む際には、例えば以下のような点について、自分の意見を述べられるように準備しておくことをおすすめします。

現物分割を希望する場合

共有不動産それ自体を切り分け、各共有者の単独所有とする現物分割を希望する場合には、具体的に、どの部分について取得を希望するのかを述べられるようにしておくとよいでしょう。

代金分割を希望する場合

共有不動産の全体を共同で第三者に売却し、その代金の分割を希望する場合には、不動産の売却条件が問題となりやすい部分です。仲介業者の選定方法や、業者買取とするかエンドユーザーへの販売を目指すか、最低売却価格、瑕疵担保責任に関する条件などの点について意見を述べられるようにしておくとよいでしょう。

価格賠償を希望する場合

ある共有者の持分を、他の共有者が買取る方式の分割を希望する場合には、代償金の金額が大きな問題となります。これを算定するための客観的資料を予め用意するなどして、どの程度の金額が相当であるかを予め検討しておくとよいでしょう。

不分割(現状維持)を希望する場合

共有物については、共有者の一部がその分割を望む以上、法的には他の共有者が分割を拒むことはできません。あなたが共有物分割を希望せず、あくまで現状の共有関係の維持を望む場合には、現状を維持するために申立人に提示できる条件(金銭の支払等)を準備しておくとよいでしょう。

3 共有物分割調停を成立させる場合の注意点

調停期日における話し合いの結果、分割内容について合意が成立すると調停調書が作成されます。この調停調書は、判決と同様の効力を有するものとされていますので、当事者の一部が調停調書に定めた内容に違反する場合にも、これに基づく強制執行ができることになります。ただし、調停条項が不明確であると強制執行ができなくなる場合もありますので、自身が合意した内容がきちんと記載されているか、誤字脱字も含めて調停条項案を十分にチェックするようにしてください。

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