不動産売買取引における解除条件・停止条件・期限

不動産売買取引の契約書には、一定の権利義務の発生や消滅に関連して、「条件」や「期限」が付されることがあります。このページでは、そのような条件や期限の意義について説明し、契約書を理解するにあたって注意しておくべき点を弁護士が解説します。

停止条件と解除条件の違い

条件とは、法律行為の効力の発生もしくは消滅を、将来発生するか否かが不確実な事実にかからせる特約のことをいいます。結果的に当該事実が発生することを条件の成就といいます。なお、ここでいう「事実」は、積極的な事実だけでなく、「△△しないこと」という消極的な事実であっても差し支えありません。

停止条件

停止条件とは、条件の成就により法律行為の効力が発生する特約をいいます。例えば、借地上の建物を譲渡するにあたり、借地人である売主が、地主側から借地権譲渡の承諾を得ることを条件として売買契約の効力を発生させるというような場合です。

解除条件

解除条件とは、条件の成就により法律行為の効力が消滅する特約をいいます。例えば、住宅を購入するにあたり、買主が住宅ローンの融資が受けられないことを条件として、売買契約が自動的に白紙になるというような場合です(いわゆる住宅ローン特約

期限とは

期限とは、法律行為の効力の発生もしくは消滅を、将来発生することが確実な事実にかからせる特約です。このうち、事実が到来する時期が確定しているものを「確定期限」、事実が到来する時期が不確定なものを「不確定期限」といいます。こちらの「事実」も消極的な事実でも差し支えありません。

例えば、2030年12月31日までに1000万円を返済するという約束をした場合、2030年12月31日がいずれ到来するのは確実な事実であり、時期も確定していますので、これは確定期限となります。

解除条件と解除事由の混同に注意

不動産取引の契約書において、ある事実が解除条件として記載されているのか、解除権発生の基礎となる解除事由として記載されているのかについては注意が必要です。例えば、住宅の売買契約においては、いわゆる住宅ローン特約条項(金融機関等の融資が受けられない時に、売買契約の効力を遡及的に消滅させるための特約)が規定されることが多くありますが、これを例に、次の2つの条項を見比べてみましょう。

融資審査の結果、前項の融資の全部または一部について表記の融資可否の期日までに承認が得られなかったときは、本契約は遡及的に消滅するものとします。

融資審査の結果、前項の融資の全部または一部について表記の融資可否の期日までに承認が得られなかったときは、買主は表記の解除の期日まではこの契約を解除することができるものとします。

相談者の中には、後者のような規定のときにも、融資承認が得られない場合には契約が当然に白紙となると理解されている方がおられますが、これは誤りということになります。法律的みると、前者の規定では融資承認を得られないという事実が契約の「解除条件」となっているのに対し、後者の規定では「留保解除権の解除事由」となっているからです。

「解除条件」の場合、その事実の発生により当然に法律行為の効力が消滅します。これに対し、「留保解除権の解除事由」の場合には、その事実が発生しても当然には法律行為の効力が消滅せず、解除権者がその事実によって発生した解除権を行使するか否かを選択できます。逆から言えば、買主が解除の意思表示をしない限り、契約の効力は消滅しないことになるのです。

契約書に条件や不確定期限を設ける際には

法律行為の有無を長期間確定できなくなる事態を避ける

条件や不確定期限を設ける際には、法律行為の効力の有無が長期間確定できなくなる事態を、できる限り回避できる条項にしておくべきです。

例えば、条件の成就・不成就が長期間確定できないおそれのある案件については、端に「~~したら」という条件を付すのではなくて、「〇月△日までに~~したら」という条件に変更するよう検討してみましょう。このようにしておけば、遅くとも〇月△日までには契約の効力の有無を確定できることになります。

あいまいな条件の記載は避ける

また、条件や不確定期限の内容が曖昧な場合にも、不安定な事態を招きかねませんので、作成の際は注意してみてください。

例えば、ある申請を条件としたのか、その申請に対する許可を条件としたのかが曖昧な事例や、当事者の行為を条件とした場合に、その程度が不明で問題となる事例が見受けられます。

さらには、そもそも条件なのか不確定期限なのかが不明瞭な場合も見受けますので、こうした条件や期限を設ける際には、弁護士に相談して慎重に条項を検討されることをお勧めします。

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