不動産の共有物分割後に欠陥が発見されたら

共有不動産を分割した後に欠陥が発見された場合、そのリスクは誰が負担することになるのでしょうか。このページでは、共有物分割における担保責任について、弁護士が解説します。

共有者の担保責任とはどのようなものか

民法は、共有物分割後に目的物に問題が発覚した場合の各共有者の責任について、各共有者が、売買取引における売主と同様の責任を負うことを規定しています。

民法261条(分割における共有者の担保責任)

各共有者は、他の共有者が分割によって取得した物について、売主と同じく、その持分に応じて担保の責任を負う。

そこで、まず、通常の売買取引における売主の担保責任について説明しましょう。

売主の担保責任とは

民法では、売買における売主の担保責任として、次のような責任を定めています。なお、売主は、基本的には、欠陥の存在を知らずに買主に売ってしまった場合でも、これらの責任を負わなければならないと考えられています(但し、民法(債権法)改正後にはこの点が変更となる予定です)。

他人の所有物を売ってしまったような場合

例えば、売主が、買主に対して売った土地が、売買の時点で、実は第三者のものであったという場合です。売主は、所有者から権利を取得して買主に引き渡すことができなければ、買主から契約を解除されたり、損害賠償の請求を受けることがあります。

数量不足が発覚したとき

例えば、ある宅地を100坪あるとして、1坪20万円で計算して2000万円で売ったのに、実際には90坪しかなかったような場合です。売主は、買主から、契約を解除されたり、不足分の代金減額請求や損害賠償請求をされることがあります。

契約時にすでに目的物の一部が滅失していたとき

例えば、庭に倉庫のある建物の売買契約をしたところ、契約締結の直前に倉庫が焼けてしまっていたような場合です。 この場合も売主は、買主から、契約を解除されたり、代金減額請求や損害賠償請求をされることがあります。

目的物に瑕疵(欠陥)があった場合

瑕疵(「かし」と読みます)とは、通常有すべき品質を備えていないことで、簡単に言えば「欠陥」のことです。この場合、売主は、買主から、契約を解除されたり、損害賠償請求をされることもあります。

共有物分割と担保責任

共有物分割は、各共有者が自己の共有持分を交換(現物分割)ないし金銭にて取引(代償分割)するという点で、売買契約と同様の性格を有するものということができます。そのため、民法は、上記のような売買契約における売主の担保責任を、共有物分割の当事者にも負担させることにしました。これにより、共有物分割により瑕疵のある共有物を取得した者を保護しようとしたわけです。

もっとも、共有物分割のうち、共有物分割訴訟が提起され、裁判所の判決に基づき実施された共有物分割は、当事者の合意に基づくものではありません。このため、裁判による共有物分割については、売買契約や協議による共有物分割とは異なり、共有者の担保責任が発生する場合でも分割の解除まではできないという見解が有力とされています。

各共有者が担保責任を負わないようにするための方策

担保責任を負わない特約

それでは、共有物分割後にこれらの担保責任を負わないようにするためには、共有者はどのようなことをすればよいのでしょうか。

それは、全共有者が、共有物を分割する際に、「担保責任を負わない」旨の特約をすることです。このような特約をしておくことで、原則として、共有者が担保責任を負わないで済みます。

担保責任を免れられない場合

ただし、共有者が担保責任を負わない旨の特約を設けた場合でも、以下の場合には担保責任を免れることはできません。

  • 目的物に瑕疵があること等を知りながらも、そのことを取得者に告げずに特約を設けた場合
  • 分割前に、目的物の全部または一部を共有者以外の他人に譲渡していたにもかかわらず、特約を設けた場合
  • 分割前に、目的物を制限する権利を自ら設定していたにもかかわらず、特約を設けた場合

まとめ

いかがでしたでしょうか。不動産の共有物分割では、担保責任の原因となり得る瑕疵・欠陥が事後的に見つかった場合、その責任を巡って深刻なトラブルとなる事例も少なくありません。しかし、以上に解説したとおり、共有物を分割する際に、「担保責任を負わない」旨の特約を設けておくことで、原則として、その共有者が担保責任を回避することも可能です。これから共有物分割を行う方は、このような条項の活用を検討してみてもよいかもしれません。

他方、既に共有不動産の分割を終えている方で、土地や建物に欠陥が発見されトラブルとなっている場合には、いち早く不動産問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

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