不動産を使った相続税対策の落とし穴

相続税の課税強化にともない、不動産を使った節税の方法をよく聞くようになりました。不動産を使った節税を行う場合、弁護士の立場からはどのような注意をするべきといえますか。

不動産購入で相続税が節税できる?

極めて単純にいえば、相続税の節税対策は、相続税評価額を目減りさせれば可能です。

現金等の金融資産を持っている場合、原則額面どおりを評価額として相続税が課税されますが、不動産の場合、土地であれば路線価(一部地域では固定試算評価額の倍率方式)が、建物であれば固定資産評価額が、原則として相続税評価額となります。一般に、これらの評価額は時価よりも低いと言われていますので、不動産を購入することで、その差額に対応する相続税額が節税できるというわけです。

もちろん、これだけですと大変良い話のように思えます。しかし、実際に不動産の購入をする場合には、その購入代金だけでなく、不動産の維持にかかる税金・費用、収益不動産の経営リスクといったものも含め、総合的な勘案が不可欠となります。節税効果ばかりに気を取られ、これらのリスクを無視していると、かえって相続財産が縮小してしまうということにもなりかねません。

とりわけ、不動産購入や建築にあたって銀行からの借入などが伴うような場合には、更に慎重に判断すべきことと思います。

節税だけではない相続対策

相続対策というと節税に目が行きがちですが、納税資金の確保遺産分割対策といった他の相続対策も同様に重要です。これらの点は、むしろ節税よりも先に検討されるべき問題であるかもしれません。

現金のまま相続させると相続税が高いからといって、全ての現金を不動産に変えてしまい、結果、納税資金のために不動産を売却することになったのでは、かえって損な場合もあるでしょう。

相続財産の大部分を単一の不動産にしてしまったような場合に、相続人が法定相続分で円満に共有してくれれば問題はありません。しかし、代償金を巡って相続紛争に発展し、結局、不動産を売却して金銭で分割するしか手段がなくなることもありえます。

相続対策には、弁護士の目線、税理士の目線、不動産業者・信託銀行の目線、様々な専門家に相談し意見を聞いて進めていくのがよいでしょう。紛争でなければ弁護士は不要というような見方もありますが、代理人として紛争処理できるのは弁護士だけです。紛争処理で培った知識・経験は、紛争の予防に必ず役立つものと考えています。

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