不動産売買契約書で最低限チェックすべき5つのポイント

売買契約を締結する際には、目的物件や代金額だけでなく、その他の契約条項にも気を配り理解しておきたいところです。どの契約条項が重要かは個別事案にもよりますが、以下では、一般的に用いられる条項のうち特に注意しておくべき項目を解説します。

土地の境界の明示

具体的な明示方法や明示不能の場合の取り決めを

土地の売買取引では、売主が、土地の引渡しまでに、売買の目的となる土地の境界を明示する義務を負うのが一般的です。しかし、この際、具体的にどのようにするのか、できない場合にどうなるのか、というところが曖昧なケースがあります。

すでに境界標が設置されているようなケースでは問題とならないこともありますが、やはり、契約段階で明示義務の内容を確定しておくべきです。売主が、境界標を新たに設置したり、境界確認書を作成しなければならない場合、隣地所有者の拒否や不同意により、明示義務が果たせなくなる可能性があるからです。

場合によっては、筆界特定制度境界確定訴訟が必要となり、数年にわたり境界を確定できず、売主が違約金を支払う場面も生じえます。

  • 筆界特定制度: ある土地が登記された際にその土地の範囲を区画するものとして定められた線(筆界)を、筆界特定登記官が調査委員の意見をふまえ、現地において特定する制度。
  • 境界確定訴訟: 隣接する土地の境界線について争いのある場合に、これを創設的に確定する訴訟手続き。

事案によりリスクの大小は様々でしょうが、可能な限り、境界の明示ができない場合に備えた規定(例えば、境界非明示でも決済するのか、反対に白紙解約とするのか。)も設けておくことが望ましいと考えます。

手付解除

解除権行使期限は日付で特定されているか

手付解除の可能な時期について、民法の原則では、相手方が「履行に着手するまで」とされています。

しかし、実際のケースでは、履行に着手したか否かの判断を巡って紛争が生じたり、基準として曖昧な面が否めません。また、この基準のみでは、一方当事者にとって決済までの準備が特に必要ない場合、他方当事者は決済までずっと手付解除ができることになってしまいかねません。

このため、紛争を未然に防止し、両当事者の公平感を保つためには、契約書上、手付解除の期限は日付で特定しておくのが望ましいと考えます。ただし、宅建業者が売主となる売買契約の場合には、手付解除の期限を定めていても、宅建業法の規定より買主に不利なものとして無効となる場合がありますので、ご注意ください

ローン特約条項

融資の申込先は限定されているか

買主が不動産の購入資金の調達に金融機関などの融資を利用する場合、(特に住宅では)買主が自らの責によらずに融資を受けられない時に契約を白紙撤回できるよう、契約が当然に解除される(解除条件型)と定めたり、買主が契約を解除できる(解除権留保型)と定めたりするケースが多くあります。一般に、このような特約をローン特約条項といいます。

不動産売買契約書にローン特約条項を設ける場合、「A銀行に融資を申し込む」「その融資について○年○月○日までに承認が得られない場合には」等、契約書で申込先を限定し、期限を日付で特定しておくのが望ましいでしょう。

特に買主としては、例えば「A銀行もしくはB銀行等」という記載では、C銀行やD銀行にも融資申込をしなければ解除できないようにも読めてしまいます。また、もし「金融機関」としか記載がなければ、どこまで断られたら解除ができるのか検討もつかなくなってしまいます。これでは特約を設けた意味がなくなりかねません。

瑕疵担保責任に関する条項

一部の責任を残すケースでは具体的なコンセンサスを

瑕疵担保責任とは、売買契約の目的物に一定の欠陥があり、それが通常の注意を払っても気づかないようなものである場合に、売主が買主に対して負う責任をいいます。

不動産売買契約書では、売主の瑕疵担保責任について、責任を負う期間を限定したり、免責したりする特約が設けられるのが通常です。事案に応じて、それぞれの当事者が注意して検討しておくべきでしょう。

特に、全ての瑕疵担保責任ついて一律に免責したりするケースでなく、一定の事項についてのみ瑕疵担保責任を残すケース(※)では、その事項に何が含まれて含まれないのか、事前に検討し当事者のコンセンサスを得ておくべきです。

※「売主は○○に限り瑕疵担保責任を負う。」、「売主は瑕疵担保責任を負う。ただし○○は除く。」というようなケース

容認条項

容認条項はできる限り具体的に記載されているか

一般的に容認事項とは、「売主が把握している目的物件のネガティブなポイントを示し」、「買主がこれを事前に了解して購入する」ということを明確にするために設けられる規定です。通常、容認事項に記載された項目は、売主の瑕疵担保責任から除外されます。

このため、契約書に容認事項を設ける場合には、その内容をできる限り具体的に記載すべきです。

事案により限定が難しいこともあるでしょうが、抽象的な部分が残ってしまう場合でも、特に買主の立場では、容認事項の記載に不確かな部分が残らぬよう、売主や仲介業者から納得がいくまで説明を受けておくべきです。

まとめ

不動産売買契約書を交わす場合には、最低限、以上の5つのポイントを意識して契約書の内容をチェックしてみてください。もちろん、それだけで不動産売買契約に関するトラブルを完全に防止できるわけではありませんが、少なくともトラブルの可能性を減らすことはできるはずです。それでもなお、トラブルの可能性をさらに減らしておきたい、あるいは契約書の内容でわからない点があるという方は、不動産契約書のチェックを取り扱っている専門家と相談しながら検討することをお勧めします。

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