家賃滞納による建物明け渡しの手続き | 家賃滞納

家賃滞納者に対し、賃料不払いを理由として賃貸借契約を解除して賃貸マンションやビルの明け渡しを求めるには、次に説明するような手順を踏むことになります。なお、以下の手続きの流れは一般的なケースを前提としたものであり、必ずこのとおりの手順になるというものではないことにご注意ください。

1 解除通知の発送

家賃滞納者との間の賃貸借契約の解除を決断した場合、まずは家賃滞納者に対し、相当な期間を定めて未払い賃料の支払を催促する書面を送付します。相当な期間としては、通常、この書面の到達後7日程度としておきます。そして、期間内に支払がない場合には、賃貸借契約を解除する旨の通知を書面で発送します。これらの催告書と解除通知書は別々に送ることも可能ですが、未払い賃料を請求書に「期限内に滞納分の支払がないときは、本書面をもって、賃貸借契約を解除する」旨の記載を加えることで、一通の文書にまとめることもできます。なお、これらの文書は原則としてすべて内容証明郵便で行います。内容証明郵便とすることで、催告や解除の通知を行ったことを証拠として残すことができるのです。もっとも、引っ越す度に家賃滞納を繰り返す悪質な家賃滞納者などには、大家や弁護士からの内容証明郵便が届いた時点で事態を察し、敢えて内容証明郵便の受け取りを拒否する者もいます。この場合には、別の手段を使って解除の意思表示を行います。

2 占有移転禁止の仮処分

家賃を滞納している賃借人が現在建物を占有しているとしても、賃貸人である不動産オーナーが賃貸借契約の解除をし、その後建物明け渡しを求める裁判を行っている最中(口頭弁論終結前)に、現在の賃借人が第三者にその建物の占有を移してしまったらどうなるでしょうか。このような場合、不動産オーナーが裁判に勝訴し、賃借人に対する明け渡し命令の判決を取得することができたとしても、不動産オーナーは新たな占有者に対してその判決に基づく強制執行をすることはできません。また、裁判のやり直しをしようにも、新たな占有者は素性の知れない者であることも多く、そもそも誰を相手として裁判をするかを判断するのも困難となりかねません。
そこで、賃借人がこうした強制執行妨害まがいの行為をする恐れがあるときには、上記のような事態を避けるため、占有者移転禁止の仮処分を活用します。この手続きを利用することによって、明け渡し訴訟の相手方とすべき占有者を固定し、その後に他者に占有が移転されても、仮処分の執行時点の占有者に対する勝訴判決で強制執行を実施することが可能となります。

3 訴訟提起

家賃滞納が相当程度累積しており、解除通知に記載した期間内に賃料の支払がない場合、賃貸借契約は解除により終了することとなります。そうなると、賃借人がその賃貸物件を占有する権原は失われますので、賃貸人が原告となって、賃借人に対し賃貸物件を明渡すよう求める民事訴訟を提起します。具体的には、賃貸人側が求める請求の内容やそれまでの事実関係を記載した訴状という書類を、賃貸借契約書などの証拠と共に裁判所に提出して裁判を起こします。裁判が始まると、相手方から答弁書という書類が提出され、その内容に反論があるときは、双方が準備書面や証拠を提出して主張立証を行います。裁判所における審理過程で、和解が成立すれば任意の明渡しが得られる可能性もありますが、そうでない場合、裁判所が明け渡し請求を認めるかどうかの判決を出します。

4 強制執行

裁判所が賃貸物件の明け渡し請求を認める判決を出しても、賃借人がこれに従わないときは、強制執行の手続きに入ります。裁判に勝ったとしても、賃貸人が改めて強制執行の申し立てを行わない限り、強制執行の手続きは自動的にはすすみません。建物明け渡しの判決についての強制執行の申立は、不動産の所在地を管轄する裁判所の執行官に対して行うことになります。強制執行の申立をすると、通常は、執行官から建物の占有者に対し、本当に強制執行をする前に(通常は4週間程度前)、裁判所の執行官が「○月〇日までに退去しない場合、強制的に退去させます」と予告するための手続が入ります。これを明け渡し催告といいます。このような明け渡し催告をしてもなお、賃貸物件の占有者が明け渡しをしないときは、いよいよ明け渡しの断行の手続きに入ります。賃貸物件のオーナーご本人か代理人が立ち会いのもと、執行官に強制的に占有者を排除してもらい、残された動産などは専門の業者に依頼して外に運び出し、晴れて賃貸物件の明け渡しを受けることができます。

家賃滞納による明け渡しの基礎知識:目次

  1. 家賃滞納による賃貸借契約の解除
  2. 家賃滞納による建物明渡しの手続き
  3. 任意の明け渡しについて
  4. 弁護士に頼むか自分でやるか
  5. 占有移転禁止の仮処分
  6. 家賃滞納の弁護士費用・裁判費用

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